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2010年02月27日

新生代(19)-第四紀(9)-破局噴火

 新生代(19)-第四紀(9)-破局噴火

 Diagram of the Yellowstone Caldera by Wikipedia.

 (旧暦  1月14日)

 日本列島では数千年に1回、地球規模では数百年に1回の頻度で文明を滅ぼすような巨大噴火が起きていますが、これを破局噴火(Catastrophic Eruption)とよんでいます。

 日本大学文理学部地球システム科学科の高橋教授が著した『破局噴火』(祥伝社新書)によれば、「破局噴火(超巨大噴火)は、いつの日か必ず起こる災害である。もし起これば被害は想像を絶するものであり、人類全体が滅亡の危機に陥るかもしれない。」とのことであります。

 う~む!
 地球上における人類の存在は、まさに奇跡そのものと云えるかもしれませぬなあ!


 米国地質調査所(United States Geological Survey)では、1回の噴火で1000立方キロ以上の岩石と火山灰を噴出する火山を超巨大火山( supervolcanoe )と呼んでいるそうですが、この用語はIAVCEI(International Association of Volcanology and Chemistry of the Earth's Interior 、国際火山学及び地球内部化学協会)などの学会ではまだ定義が定まっていないとのことです。

で、この破局噴火で噴出したマグマ量を、身近な噴火災害のところから比較していくと、

 1. 雲仙普賢岳   1990~1995年   0.2立方キロ
   平成3年(1991)6月3日午後4時8分に発生した火砕流では、取材に当たっていた報道関係者16名、火山の写真撮影と映画撮影のパイオニアとして世界的に著名な火山学者であるフランス人のクラフト夫妻(Maurice Krafft、1946~ 1991&Katia Krafft、1942~1991)とアメリカ地質調査所(United States Geological Survey)の火山学者ハリー・グリッケン(Harry Glicken、1958 ~1991)の3名、警戒中の消防団員12名など合わせて43名の死者行方不明者を出した。

 新生代(19)-第四紀(9)-破局噴火
 雲仙岳と東側山麓のラハール(Lahar、火山泥流)跡

 2. セント・ヘレンズ山   1980年   1.0立方キロ
   その優美な風貌から「アメリカの富士山」とも呼ばれたワシントン州スカマニア郡にあるセント・ヘレンズ山が、1980年5月18日8時32分、123年ぶりに大噴火を起こし、北側の斜面で大規模な山体崩壊を起こした。また噴出したマグマは大規模な火砕流を発生させ、約600平方キロの森林が火砕流に飲み込まれ焼失した。
   この噴火により広島型原爆2万7,000個分に相当するエネルギーが放出され、噴出物の総量は1立方キロを超えた。その結果、セント・ヘレンズ山の北側には幅約3km、深さ約800mの巨大な火口が出現し、標高は400mほど減少した。この噴火により57人が死亡もしくは行方不明となった。

 新生代(19)-第四紀(9)-破局噴火
 3,000 ft (1 km) steam plume on May 19, 1982, two years after Mount St. Helens major eruption by Wikipedia.

 3. ピナトゥボ山   1991年   5.0立方キロ
   ピナトゥボ山はフィリピンのルソン島西部にある成層火山で、密林が山を覆う目立たない山であったが、1991年6月初旬に約500年ぶりに噴火し、周辺地域では火砕流と火山灰に加えて火山泥流が発生し、数千戸の家屋が倒壊するなど、多大な被害を出した。
   1991年6月7日のマグマ性噴火からほぼ活動が終焉した9月までの噴出物の総量は約10立方キロ、マグマ量にして約5.0立方キロに相当する。これは大規模な山体崩壊をおこした1980年のセント・ヘレンズ山の約10倍にあたる。

 新生代(19)-第四紀(9)-破局噴火
 Die Pinatubo-Caldera mit dem Kratersee im Mai 1992. Der See ist von zahlreichen Fumarolen umgeben von Wikipedia.
 火口湖を伴うピナトゥボ・カルデラ、1992年5月。火口湖は多数の噴煙に囲まれている。
 4. タンボラ山   1815年   55立方キロ
   タンボラ山はインドネシアのバリ島の東、ロンボク島に続く島嶼であるスンバワ島の北部に張り出した、房総半島の大きさほどのサンガル半島の大部分を占める巨大火山である。直径40~50Km、高さ4,300 mのインドネシア諸島の最高峰の一つであったが、1815年4月5日、5,000年の眠りから覚めて大噴火を起こした。
   タンボラ山の噴火によって噴出した珪長質火山噴出物の総量は150立方キロ、マグマ量に換算して約55立方キロを越えていたと推定されている。
   まさに人類有史上、最大規模の巨大噴火であった。
   噴火後、タンボラ山の山頂には直径6Km、深さ1.2Kmのカルデラが出現し、高さは2,821mにまで激減している。
この噴火により、人口約12,000人のスンバワ島の生存者はわずか26人と記録されており、その後の飢餓や疾病も含めると、犠牲者の数は92,000人にものぼったと推定されている。

   また、この噴火の翌年から、北アメリカとヨーロッパを中心に異常気象が続いて、「夏の来なかった年」(Year Without a Summer)として知られており、北半球においては、農作物が不作で家畜が死に、19世紀最悪の飢饉をもたらした。

 The eruption created global climate anomalies; 1816 became known as the "Year Without a Summer" because of the effect on North American and European weather. Agricultural crops failed and livestock died in much of the Northern Hemisphere, resulting in the worst famine of the 19th century.

 新生代(19)-第四紀(9)-破局噴火
 The summit caldera of the volcano at Mt. Tambora by Wikipedia.

 5. 鬼界カルデラ   約7,300年前 (暦年補正)   60立方キロ
   鬼界カルデラは、薩摩半島の南方約50kmの大隅海峡の海面下にあり、薩南諸島北部の薩摩硫黄島、昭和硫黄島、竹島がカルデラの北縁にあたる。
   このカルデラは、東西約20km、南北約17km の海底カルデラで、約7,300年前(暦年補正)の鬼界アカホヤ噴火により形成され、その総噴出物量は約170立方キロ、マグマ量にして約60立方キロに相当する。
   大規模な火砕流(竹島火砕流)は海面上を流走し、種子島、屋久島などの近隣島嶼のほか薩摩半島及び大隅半島の大部分を覆っている。
   またこの噴火活動に伴って巨大地震が少なくとも2 回発生したと推定されており、カルデラ陥没に伴う巨大な津波が発生した可能性も指摘され、数値計算によれば、津波の波高は大隈海峡や種子島地方で最大20~30mに達した可能性が発表されている。
   さらには、この巨大噴火により南九州のカシやシイからなる豊かな照葉樹林が壊滅し、九州貝殻文系土器文化や塞ノ神(せのかん)式土器文化が衰退している。

 新生代(19)-第四紀(9)-破局噴火
 Kikai, Aufnahme von 1996. 鬼界、1996年撮影 

 6. ラバクリーク・タフ   約64万年前   1,000立方キロ
   ラバクリーク・タフ(Lava Creek Tuff)は、約64万年前に新期イエローストーン・カルデラ(72×48Km)が噴出したときに形成され、その珪長質火砕流堆積物の総量はマグマ量にして約 1,000立方キロと推定されている。
   タフ(Tuff means a rock made up of very small volcanic fragments compacted together)とは火山灰や凝灰岩のことを意味する英語で、この火山噴出物による堆積物は、イエローストーン公園内を流れるギボン川に沿った崖の浸食によって明らかになったもので、様々な場所で明るいグレーから薄い赤までの色が連なっている。
   微粒子状のものからガラスからなる組織(非顕晶質)まで連なる堆積物の密度は密集して結合され、その厚さは、180~200 mに及ぶ。

 新生代(19)-第四紀(9)-破局噴火
 Extent of Lava Creek ash bed by Wikipedia.

 7. ハックルベリーリッジ・タフ   約210万年前   2,500立方キロ
   ハックルベリーリッジ・タフ(Huckleberry Ridge Tuff)は、イエローストーン公園内に広がるアイランドパーク・カルデラ(93×64Km)を形成したハックルベリーリッジ噴火によって造られた。
   約2,500立方キロもの火山噴出物は、イエローストーン・ホットスポットの歴史の中でも最大級の噴火であり、次のトバ噴火やコロラドのラガリタ・カルデラを形成したフィッシュ・キャニオン噴火に連なる地球史の上でも3番目に大きな爆発的火山噴火であったと考えられている。
   ホットスポットは、地球中心核とマントルの境界部附近から上昇してきた高温の固体状態の湧昇流(マントル・プルーム)が、地殻直下まで到達した場所をさし、イエローストーンのカルデラ群もこのような地球上の熱い特異点に形成された火山群である。
   この210万年前の噴火に続いて、イエローストーン・ホットスポットからの噴火により形成されたカルデラは、その後の130万年前のメサフォールズ・タフ噴火や約64万年前のラバクリーク・タフ噴火などによるものである。

 新生代(19)-第四紀(9)-破局噴火
 Huckleberry Ridge ash bed by Wikipedia.

 8. 新期トバ・タフ   約74,000年前   2,800 立方キロ
   インドネシアのスマトラ島北部のトバ湖は、100×35Kmの大きさの巨大なトバ・カルデラ内にある湖であるが、このトバ・カルデラは互いに重複する南東部のポルセラ・カルデラ(古期トバ・タフ、84万年前)、北西部のハランガオル・カルデラ(中期トバ・タフ、50万年前)、中央部のシバドン・カルデラ(新期トバ・タフ、約74,000年前)の三つのカルデラから構成された複合カルデラである。
   このトバ・カルデラでの最新の噴火は、約74,000年前に起きた地球上最大規模の噴火であり、その噴出量はマグマ量に換算して2,800 立方キロ、火山爆発指数( Volcanic Explosivity Index, VEI)8の想像を絶する超巨大噴火であった。

   トバ・カルデラ周辺にはこの噴火による火砕流堆積物、新期トバ・タフが厚く堆積し、インド洋北部の2,400Km離れた海底でも30cm、インド大陸で15cm、中国でも数cmの火山灰が報告されている。
   さらに、南極やグリーンランドの氷河のボーリング掘削コア資料に残る火山ガスの影響による硫酸イオン濃度の分析から、成層圏高く舞い上がった硫酸エアロゾルは太陽光を反射・吸収し、6年以上地球上を覆っていたことが判っている。
   また、この新期トバ・タフ噴火による北半球の年平均気温低下は10℃にもおよび、地球上の生態系特に人類は、壊滅的影響を受けたとする説もある。

 新生代(19)-第四紀(9)-破局噴火新生代(19)-第四紀(9)-破局噴火 
  Landsat photo by Wikipedia.                                Lake Toba Aerial View by Wikipedia.

 噴出量が1,000立方キロを超えるような超巨大噴火は、地球上では5万年に1回の割合で生じるとの説があるようですが、「新期トバ・タフの噴火から7万年以上の時間が経過しているので、いつ最大級の超巨大噴火が起きてもおかしくない。人類が最近5,000年間で超巨大噴火に遭遇しなかったのは、単なる偶然に過ぎない。人類の存亡にも関わる超巨大噴火に対する国際的な対応プロジェクトを、国連などが中心となって早急に立ち上げるべきであろう。」と高橋教授は警鐘を鳴らしています。

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Posted by 嘉穂のフーケモン at 22:43│Comments(0)新生代
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