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2007年11月30日

新生代(16)-新第三紀(6)-イエローバンド

 新生代(16)-新第三紀(6)-イエローバンド 
 Mount Everest North Face as seen from the path to the base camp, Tibet.
 Photo taken by Luca Galuzzi

 (旧暦 10月21日)

 新生代(Cenozoic)は、約6,500万年前 から現代、つまり恐竜が絶滅してから現代に至る地質時代の区分のことで、ずっと以前はさらに第三紀と第四紀に区分されていましたが、1989年に国際地質科学連合(IUGS)によって第三紀は、新第三紀と古第三紀に区分され、さらに2004年には第四紀が廃止され、新第三紀と古第三紀の2つの紀に分けられてしまいました。

 学問や科学技術などの分野は時代とともに変わっていくものであるということは頭では理解していましたが、いやはや、昨今の変遷には驚かされるものが多々あります。
 かつて「昔陸軍、いま総評」という絶大な権力をもった組織をさす言葉がありましたが、現在では、「昔陸軍、いまマスコミ」とでも言うのでしょうか、「昔の常識、今の非常識」ですのん!

 さて、世界の最高峰エベレスト(チベット名チョモランマ、ネパール名サガルマーター)の山頂直下を横切る石灰岩からなる黄色い岩帯はイエローバンドと呼ばれ、岩肌がもろく崩れやすいため、登山家の間では登頂最後の難関として恐れられているそうです。頂上を目前にしてこのイエローバンドに阻まれ、引き返した登山家も少なくないとのこと。

 このイエローバンドは、「テチス海(Tethys Sea)」の海底に堆積した堆積物からなり、この「テチス海(Tethys Sea)」は、現在の地中海周辺から中央アジア、ヒマラヤ、東南アジアにまで広がっていたと考えられています。

 「テチス海(Tethys Sea)」の名前はギリシャ神話の海の女神Tethysに由来し、アルプス山脈の地理の専門家として知られたウィーン大学地質学教授エドアルト・ジュース(Eduard Suess、1831~1914)によって1893年にその存在が提唱されています。
 エベレスト山頂部から120m下までの地層はチョモランマ層と呼ばれる石灰岩で、非変成のテチス堆積物の最下部を形成し、前~中期オルドビス紀(5億1千万年前~4億6千万年前)の海ユリや腕足貝、三葉虫化石が見つかっています。
 その下のイエローバンドは結晶質石灰岩からなり、高ヒマラヤ変成岩類の最上部層を形成しています。
 イエローバンドの下層には震旦系かカンブリア系と考えられている珪質砂岩、黒雲母片岩からなる結晶片岩が存在し、ノースコル層と呼ばれています。

 原生代最後の区分である約6億2,000万年前~約5億4,200万年前の先カンブリア代末期の時代は、2004年3月に国際地質科学連合(IUGS)が「エディアカラ紀」(Ediacaran)と呼ぶことを公式に定義しましたが、中国では昔から震旦系(シニアン・システム)と呼ばれ、多くの文献に、震旦系-寒武系境界[シニアン-カンブリアン・システム境界]と書かれているようです。

 約1億8,000万年前の中生代ジュラ紀に超大陸パンゲア大陸が分裂を始め、約5,000万年前にインド大陸はアジア大陸に衝突して現在もその衝突は継続しています。
 ガンジス平原の北限でインド大陸はアジア大陸の下に潜り込み、その速度は年間5.5㎝、その結果、ヒマラヤ山脈は年間1㎝近い速度で上昇していると報告されています。つまり、インド大陸の大陸棚を形成していた4億6千万年前の海生生物の化石を含む地層は、大陸衝突によって1万メートル近く持ち上げられた事になります。

 九州大学の比較社会文化研究院環境変動部門地球変動講座の酒井治孝教授によれば、約2,000万年前まではエベレストは15,000メートル以上ある二重構造だったが、高くなり過ぎて自重による構造的崩壊を続け、上の層が約300万年かけてずり落ち、さらに風雪や氷河による浸食により現在の形になったとしています。

 現在の学会では、エベレスト山脈が大量の風化物質を供給した結果、大気中のCO2の除去が促進され、地球全体が寒冷化して新第三紀更新世(旧第四紀:180万年前~1万年前)の氷河時代が生まれたという仮説が提唱されているとのこと。

 いや~、地球惑星科学というものはなかなか面白いもんでんな~、飯は食えませんが・・・。

 参考 九州大学総合研究博物館 地球惑星科学への招待
http://www.museum.kyushu-u.ac.jp/PLANET/map.html

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Posted by 嘉穂のフーケモン at 15:09│Comments(0)新生代
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