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2009年06月03日

新生代(18)-新第三紀(8)-マンモスの絶滅(2)

 新生代(18)-新第三紀(8)-マンモスの絶滅(2)
 An early map of the extent of Lake Agassiz (by 19th century geologist Warren Upham). This map is now believed to underestimate the extent of the region once overlain by Lake Agassiz by Wikipedia.

 (旧暦 5月 11日)

 新生代(17)-新第三紀(7)-マンモスの絶滅(1)のつづき

 マンモスの絶滅の原因は、以下の二つに代表される議論が続いてきました。

 1. 過剰殺戮説:アリゾナ大学地球科学教授ポール・S・マーティン博士の電撃理論説(the blitzkrieg theory)に代表される、人類による過度の狩猟により大型獣が絶滅したとする仮説
   Martin, P. S. 1967. 〝Prehistoric overkill〟 Pp. 75~120 In

 2. 氷河期末期の気候変動に伴う環境変化を原因とする説:デンバー自然史博物館のラッセル・W・グラハム博士によって提唱された仮説
 
  Graham, R. W. and Mead, J. I. Mead 1987. 〝Environmental fluctuations and evolution of mammalian faunas during the last deglaciation in North America〟

 しかし、この気候変動説(the climatic theory)や電撃理論説(the blitzkrieg theory:急激な殺戮説)の二つの仮説に納得しない科学者が、1997年に第3番目の仮説を提唱しました。それが、疫病説(the disease hypothesis)です。

 3. 疫病説:ニューヨークのアーロン・ダイヤモンド・エイズ研究センターのウィルス学者マクフィー博士とプレストン・A・マルクス博士によって提唱された仮説で、マンモスの免疫機構が未知の致命的な病原体によって感染された。それらの病原体はマンモスを消滅させた人々によって持ち込まれたばかりではなく、犬、ネズミ、鳥、シベリアから北米大陸への最初の人間の到着に伴った寄生虫や他の生物によって運ばれた病原体の可能性が考えられる
   MacPhee, R. D. and Marx, P. A. 1997. 〝The 40,000 year plague: Humans, hyperdisease, and first-contact extinctions〟 Pp. 169~217

 Marx have so far identified only two existing pathogens that fulfill all the requirements: leptospirosis, a bacterium spread in rat urine, and the rabies virus.
 プレストン・A・マルクス博士は、これまでのところすべての必要条件を満たす2つの既存の病原体を識別した。それは、ネズミの尿によって蔓延するバクテリアであるレプトスピラ症(病原性レプトスピラの感染による人獣共通感染症)と狂犬病ウイルスである。

  そして2005年、「4万1千年前の超新星爆発がマンモスの絶滅を引き起こしたかもしれない」との新たな仮説〝impact theory〟が「米国エネルギー省ローレンス・バークレー国立研究所」の核科学者リチャード・B・ファイアストーン博士によって発表されました。

4. 超新星爆発による隕石が大気圏内で爆発し衝撃が生じたとする理論:地球から250光年離れた超新星の爆発がマンモスの絶滅に関係している。その最初の衝撃波は、3万4,000年前に地球を襲った。その証拠は、地球に秒速1万kmで衝突した金属粒子によると考えられる、マンモスの牙に残された小さな衝撃痕である。
   超新星爆発で吹き飛ばされた塵が低密度の固まりとなり、その彗星のような物体が太陽系に降り注いだ。その一つ、直径約10kmと考えられる隕石が1万3,000年前に北米大陸を直撃し、ほとんどのマンモスや北米の他の多くの大型哺乳類を絶滅させる激変を引き起こした。


 2007年9月、リチャード・B・ファイアストーン博士らは、1万2,900年前におきた隕石の衝突が、北米大陸の動植物に大規模な環境変化をもたらし、約1,300年に渡る亜氷河期(the Younger Dryas stadial)が訪れ、数種類の動物とアメリカ先住民の石器文化であるクロービス文化(Clovis culture)が消滅したとする論文を発表しました。
 〝Evidence for an extraterrestrial impact 12,900 years ago that contributed to the megafaunal extinctions and the Younger Dryas cooling〟
  (http://www.pnas.org/content/104/41/16016.full
  宇宙からの衝撃が地球環境、特に気候に影響を与えることはよく知られていますが、北アメリカには1万3,000年前の隕石の衝突によるクレーターが存在していないことから、科学者たちは流星もしくは彗星が大気圏で爆発したのだと推測してきました。

 彼らは、流星もしくは彗星が大気圏で爆発したこと(Extraterrestrial catastorophes)によって短時間に生じた熱と圧力が、北米大陸を覆っていたローレンタイド氷床(the Laurentide ice sheet)の端を崩壊させ、その結果、北大西洋に大量の淡水を流し込み、西ヨーロッパを暖めている暖流の速度を低下させたと提唱しています。

 In this case, scientists propose that flash heat and pressure from an explosion destabilised the edges of the Laurentide ice sheet that covered North America, adding fresh water to the North Atlantic, and slowing the conveyor of warm water that heats Western Europe.

 後氷期、融解したローレンタイド氷床は巨大なアガシー湖(Lake Agassiz)を造り、あふれた大量の淡水はミシシッピ川を通じてメキシコ湾に注いでいました。
 しかし氷床が北に後退すると共に現在のセントローレンス川の流路にかわり、アガシー湖の淡水はセントローレンス川を通じて北大西洋に流出するようになり、この膨大な量の淡水が北大西洋の表層に広がってメキシコ湾流の北上と熱の放出を妨げた結果、ヨーロッパは再び寒冷化し、世界的に影響が及んだとされています。

 新生代(18)-新第三紀(8)-マンモスの絶滅(2)
A summary of the path of the thermohaline circulation/ Great Ocean Conveyor. Blue paths represent deep-water currents, while red paths represent surface currents by Wikipedia.

 この西ヨーロッパを暖めている温水のコンベア(conveyor of warm water)は、Thermohaline circulation(熱塩循環)と呼ばれ、表層海流が赤道大西洋から極域に向かうにつれて冷却して高緯度で沈み込み、1200年後に北東太平洋に達して再び表層に戻る循環システムを形成し、それぞれの海盆の間で広範囲に渡って混合が起こり均一化することで海洋の世界的なシステムを作っていると解説されています。

 しかし、この理論は、なぜ南アメリカが最初に寒冷化したのかを説明しきれていません。

 This theory does not explain why South America cooled first.


 A comet or asteroid that fragmented in Earth's atmosphere might have time to disperse over a few hundred kilometres, but certainly not thousands of kilometres across a continent, he said.
 "I know of no mechanism that would break up a comet and distribute it over North America in the way they suggest," Dr Morrison told BBC News.


 NASAの天文学者デビッド・モリソン博士は、地球の大気圏で分解した彗星や小惑星の破片が、数百kmの範囲に分散する時間はあるかもしれないが、大陸全体を覆う数千kmに達することはあり得ないと語る。
 「彼らが示唆しているような、彗星を分裂させて北米大陸全体にその破片をまき散らせるようなメカニズムは聞いたことがない」とデビッド・モリソン博士はBBCに話しています。


 いずれにしても、マンモスが絶滅した真の原因が解明されるまでには、まだまだ時間がかかりそうでうのん。

 おしまい

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Posted by 嘉穂のフーケモン at 00:21│Comments(0)新生代
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