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2014年03月26日

新生代(21)— 新世紀(10)ーザンクレアン大洪水(1)

 新生代(21)— 新世紀(10)ーザンクレアン大洪水(1)

 ザンクレアン洪水時の地中海のイメージ図

  (旧暦2月26日)

  犀星忌

  金沢生まれの詩人、小説家、室生犀星の昭和37年(1962)の忌日。
  私生児として生まれ、すぐに養子に出された。実父に捨てられた悲しみや劣等感を胸に抱き締めつつ、反抗的な少年として成長していったことは、犀星の文学に深い影響を与えたとされている。

 新生代(21)— 新世紀(10)ーザンクレアン大洪水(1)


  夏の日の 匹婦の腹に生まれけり        『犀星発句集』(1943年)

  小景異情(その二)
  ふるさとは遠きにありて思ふもの
  そして悲しくうたふもの
  よしや

  うらぶれて異土の乞食(かたゐ)となるとても
  帰るところにあるまじや

  ひとり都のゆふぐれに

  ふるさとおもひ涙ぐむ
 
  そのこころもて

  遠きみやこにかへらばや

  遠きみやこにかへらばや


  鐵幹忌

  歌人、慶應義塾大学文学部教授、鐵幹與謝野寛の昭和10年(1935)の忌日。
  明治33年(1900)4月、月刊文芸誌「明星」を創刊。当時無名の若手歌人であった鳳晶子の類まれな才能を見ぬいて、晶子の歌集『みだれ髪』の作成を支援し、明治34年(1901)8月、『みだれ髪』を刊行。

 新生代(21)— 新世紀(10)ーザンクレアン大洪水(1)

  昭和7年(1932)、第一次上海事変に取材した「爆弾三勇士の歌」の毎日新聞による歌詞公募に応じ、一等入選を果たした。
 
  作曲 陸軍戸山学校軍楽隊
      楽長  辻順治
      楽長補 大沼哲
  一、
  廟行鎮の敵の陣

  我の友隊すでに攻む

  折から凍る如月の

  二十二日の午前五時
  (以下略)


  楽聖忌

  1827年、楽聖(der große Musiker)と呼ばれたドイツの作曲家ベートーベンがウィーンの自宅で亡くなった日。

   新生代(21)— 新世紀(10)ーザンクレアン大洪水(1)
 
  Portrait of Beethoven as a young man by Carl Traugott Riedel (1769–1832)
  
   Er fühlt sein Ende, denn gestern sagte er mir und Breuning: Plaudite amici, comoedia finita est. (p. 392)


   彼は終焉の近いことに気づいています。というのは、昨日、私とブロイニングに Plaudite amici, Comoedia finita est. (喝采せよ友よ、喜劇は終つた)と語つたからです。

   Schindler, Anton. Biographie von Ludwig van Beethoven. Leipzig : P. Reclam, 1970 (Universal-Bibliothek ; Bd. 496)





  地質時代(Geological age)とは、約46億年前の地球の誕生から、数千年前の記録の残っている時代より前までの期間であると定義されています。

  区分の仕方は、古い方から冥王代(Hadean eon)、始生代(Archean eon)、原生代(Proterozoic)、顕生代(Phanerozoic eon)の4つの累代(eon)、さらには細かく代(era)、紀(period)、世(epoch)、期(age)と分類されています。これらの区分は化石帯区分(Calcareous nannofossil zones of the Quaternary)と呼ばれ、地層や化石の研究から導きだされたものですが、これらの時代区分は動物化石を基に分類されているので、植物相の変異とは必ずしも一致していません。

  地質年代学(Geochronology)で定義する累代、代、紀、世、期に相応する地層は、地層のできた順序を研究する層序学(stratigraphy)では累界(eonothem)、界(erathem)、系(system)、統(series)、階(stage)と呼び、地質年代学で言う前期(early)、中期(middle)、後期(late)に対しては下部(lower)、中部(middle)、上部(upper)と呼んでいます。

 新生代(21)— 新世紀(10)ーザンクレアン大洪水(1)
   この時代区分の定義、名称や基底年代等に関しては絶えず見直されており、また合意に至っていないものも多々あります。これらは国際地質科学連合(IUGS)、 国際第四紀学連合(INQUA)、 国際層序委員会(ICS)等で検討され、4年ごとに開催される万国地質学会議(International Geological Congress)で批准されてきています。

   まったく、私どもが学んできた名称、例えば「第三紀」(Tertiary)という呼称も、現在では国際地質科学連合(IUGS)は「非公式用語」に位置づけているようです。
   この言葉の語源は、18世紀中頃にイタリアの地質学者ジョヴァンニ・アルドゥイノ(Giovanni Arduino、1714〜1795)が、イタリアの南アルプスの地層やそこに含まれる化石の分類から、地質時代を3つの時代区分に定義したことによります。
  face03第一紀(Primario)は化石の出ない時代。
  face05第二紀(Secondario)は化石が出るが現生生物とは遙かに異なる時代。
  face08第三紀(Terziarioo)は現生生物に近い生物の化石が出る時代、後に第三紀は分割されて第四紀(Quaternaio)が追加された。


   現在では、「第四紀」(Quaternary)のみが公式用語であり、日本語では「第三紀」が「古第三紀」と「新第三紀」に分割されて名残を留めていますが、英語ではTertiary(第三紀)は、Paleogene(旧世紀)とNeogene(新世紀)が公式用語になっています。

   さて、およそ600万年前の新生代中新世末期のメッシーナ期(Messinian、724万6千年前〜533万2千年前)に、地殻変動が進行してジブラルタル海峡が閉鎖され、地中海が一時的に太平洋から分離された時期があったことは、以前、本ブログに掲載しました。
 新生代(20)−新第三紀(9)−メッシニアン塩分危機 (2012年12月11日)

  この間に地中海は何度か干上がって、厚さ最大3㎞もの岩塩堆積層が形成され、その後、約550万年前には、地中海は完全に孤立して塩の砂漠となってしまいました。しかし、次のザンクラ期(Zanclean、533万2千年前〜360万年前)になると、大西洋からの海水の流入により、地中海は現在の状況になったとされています。
 新生代(21)— 新世紀(10)ーザンクレアン大洪水(1)

 新生代(21)— 新世紀(10)ーザンクレアン大洪水(1)

  
  Zanclean from Wikipedia 

   ザンクラ期

  
  The Zanclean stage was introduced by Giuseppe Seguenza in 1868. It is named after Zancla, the pre-Roman name for the Italian city of Messina on Sicily.


 ザンクラ階は、1868年に Giuseppe Seguenza によって導入されました。 それはシシリー島メッシーナの先ローマ時代名 Zancla にちなんで名付けられました。

 
  The base of the Zanclean (and the Pliocene series) lies with the top of magnetic chronozone Cr3 (about 100.000 years before the Thvera normal subchronozone C3n.4n). The base is also close to the extinction level of the calcareous nanoplankton species Triquetrorhabdulus rugosus (the base of biozone CN10b) and the first appearance of nanoplankton Ceratolithus acutus. The GSSP for the Zanclean is in the vicinity of the ruins of the ancient city of Heraclea Minoa on Sicily, Italy.


  ザンクラ階(鮮新統)の基底は、磁極期Cr3(Thvera 正亜磁極期C3n.4nの約10万年前)の頂上にあります。
  基底は同じく、石灰質ナノプランクトンの種 Triquetrorhabdulus rugosus(生存帯CN10bの基底)の絶滅平面とナノプランクトン Ceratolithus acutus の初出現に近接しています。ザンクラ階のGSSP(国際標準模式層断面および地点)は、イタリア、シシリー島の古代都市ヘラクレア・ミノアの旧跡付近にあります。


 
 




  Cande and Kent(1995), Wei(1995)の地磁気極性年代表 (5百万年前〜1千万年前)

 新生代(21)— 新世紀(10)ーザンクレアン大洪水(1)

 新生代(21)— 新世紀(10)ーザンクレアン大洪水(1)

  
  
  The top of the Zanclean stage (the base of the Piacenzian stage) is at the base of magnetic chronozone C2An(the base of the Gauss chronozone ) and at the extinction of the planktonic forams Globorotalia margaritae and Pulleniatina primalis.


  ザンクラ階の頂上(ピアチェンツァ階の基底)は、磁極期C2An(Gauss 正磁極期の基底)の基底で、浮遊性有孔虫 Globorotalia margaritae と Pulleniatina primalis の絶滅期にあります。




  ※ 新生代(Cenozoic)新世紀(Neogene)の海洋域堆積層の対比のためには、浮遊性有孔虫(planktonic foraminifer)と石灰質ナノ化石からなる石灰質プランクトンが正層序に用いられ、海洋底磁気異常に基づくC系列(C-sequence)が、磁気層序として海成・陸成堆積層と対比されてきました。
















  Cande and Kent(1995), Wei(1995)の地磁気極性年代表 (現代〜5百万年前)

 
 ‘Zanclean flood’ from Wikipedia

   ザンクラ期洪水


  The Zanclean flood (also known as "Zanclean Deluge") is a flood theorized to have refilled the Mediterranean Sea 5.33 million years ago. This flooding ended the Messinian salinity crisis and marks the beginning of the Zanclean age. The term was coined by Maria Bianca Cita in 1972 during the Deep Sea Drilling Project study that investigated the transition between the Messinian and Zanclean ages in the Mediterranean.
 

 ザンクラ期洪水(同じく「ザンクラ期大洪水」として知られる)は、約533万年に地中海を再び満たした洪水として理論づけられています。この洪水は、メッシーナ期塩分危機を終了させ、ザンクラ期の始まりを特徴づけます。 この用語は、地中海におけるメッシーナ期とザンクラ期間の変遷を調査した深海掘削事業の間の1972年に、Maria Bianca Cita によって造り出されました。


  According to this model, water from the Atlantic Ocean refilled the cut-off inland seas through the modern-day Gibraltar Strait. The Mediterranean Basin flooded over a period estimated between several months and two years (e.g. Roveri et al., 2008).Sea level rise in the basin may have reached rates at times greater than ten metres per day (e.g. Garcia-Castellanos et al., 2009).
 

 このモデルによれば、大西洋からの水が、現代のジブラルタル海峡を通って隔離された内海を再び満たしました。地中海海盆は、数カ月から2年(例、Roveri その他、2008)の間と推定される期間にわたって氾濫しました。海水面の上昇が時には1日に10mより大きい速度(例、Garcia-Castellanosその他、2009)に達したかもしれません。


 It is imagined by these authors that water rushed down a drop of more than a kilometer with a discharge of up to 108 m3/s, about 1000 times that of the present day Amazon River. Studies of the underground structures at the Gibraltar Strait show that the flooding channel descended in a rather gradual way toward the bottom of the basin rather than forming a steep waterfall.
 
 これらの著者によって、水が最高108 m3/s(現代アマゾン川のそれのおよそ1000倍の)の放出とともに、1㎞以上の落下の下に放出されたと想像されます。
 ジブラルタル海峡の地下構造に関する研究論文は、氾濫水路が急な滝を作るよりもむしろ海盆の底の方へ緩やかな方法で下ったことを示します。

 
  Not all scientific studies agree with the catastrophistic interpretation of this event. Many authors maintain that the reinstallment of a "normal" Mediterranean Sea basin following the Messinian "Lago Mare" episode took place in a much more gradual way.

 
 すべての科学的な研究が、この出来事の天変地異的な解釈と合致するわけではありません。多くの著者が、このメッシーナ期の「Lago Mare」事象の後に続く通常の地中海海盆への復元は、ずっと緩やかな方法で起きたと主張しています。

  
  注)
  Hsü (ケネス・シュー、1929〜 、中華民国出身の中国系アメリカ人地質学者、作家)らが、ルッジェリ(1967)によって作られた「Lago Mare」(湖海)と いう用語を用いました。この用語は、鮮新世の海洋堆積に先行して、小塩層環境が蒸発岩の堆積を促進したメッシーナ期後期の地中海を特徴づけています。



  つづく


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Posted by 嘉穂のフーケモン at 19:09│Comments(0)新生代
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