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2005年03月09日

漢詩(3)−杜甫(1)-兵車行

 漢詩(3)−杜甫(1)-兵車行
 
 Qin dynasty bronze chariot and horses

 (旧暦  1月29日)

 車轔轔(りんりん) 馬蕭蕭(しょうしょう)
 行人の弓箭おのおの腰に在り
 耶孃妻子(やじょうさいし)走りて相送り
 塵埃に見えず咸陽橋                 
 衣を牽(ひ)き足を頓(とん)し道をさえぎりて哭す
 哭聲直ちに上りて雲霄(うんしょう)を干(おか)す 

 天寶10載(751)、杜甫は出征兵士の嘆きを借りて、唐第6代玄宗皇帝の無益な外征策を批判しました。

 道傍を過ぐる者行人に問う              
 行人但だ云うのみ「點行頻(しき)りなり」と
 或いは十五より北のかた河を防ぎ
 便(すなわ)ち四十に至るも西のかた田を營む
 去(ゆ)く時里正(りせい)與(ために)頭を裹(つつ)み   
 帰り来たれば頭白くして還(ま)た邊を戍(まも)る
 邊庭の流血海水を成すも
 武皇邊を開くの意未だ已(や)まず 

         
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 君見ずや青海の頭(ほとり)
 古来白骨人の収むる無く
 新鬼は煩冤(はんえん)し舊(きゅう)鬼は哭し
 天陰(くも)り雨濕(うるお)うとき聲の啾啾(しゅうしゅう)たるを。     
 車輪がきしみをあげ、馬がさみしげにいななく。
 出生する兵士たちは、腰にそれぞれ弓矢を帯びている。
 父母や妻子が走りながら見送ってゆく。
 立ち上る砂塵に咸陽の橋も見えない。
 上衣にすがりつき、地たんだを踏み、道をさえぎって泣き叫ぶ。
 天にとどろくその声は、雲の彼方までつきぬける。

 道を通りかかった者(杜甫)が、兵士に問いかけると
 兵士はただこう言うばかりだ−「召集がしきりです」と。
 十五の時に北方の黄河の防備につき、
 四十になっても西域で屯田兵をさせられいる者もいます。
 国を出る時には、村長が元服の式を挙げてくれたのですが、
 帰って来てみるともう頭は白くなってしまい、
 それでもまたこうして国境の守りにつくのです。
 国境地帯はもう、血の海です。
 なのに皇帝は国土拡大の意図をいまだ止めようとはしません。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 君は見たことがあるか、青海のほとりを。
 はるか昔から白骨が散乱し、それを弔う者も無く、
 死んだばかりの魂はもだえうめき、時を経た魂は泣き叫んでいるのを。
 天が陰り雨のしとしと降る時など、
 彼らのむせび泣く声が聞こえてくるというではないか。


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Posted by 嘉穂のフーケモン at 08:40│Comments(0)漢詩
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