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2005年11月26日

やまとうた(14)−大空の月の光し清ければ

 やまとうた(14)−大空の月の光し清ければ

 山寺(立石寺)五大堂

 (旧暦 10月25日)

 題しらず      読人しらず
 大空の月の光し清ければ 影見し水ぞ先づこほりける (古今集316)


 各地からは紅葉のたよりも聞かれ、行く秋を惜しむかのような穏やかな日が続いていますが、アメリカやカナダでは、晩秋や初冬におこる穏やかでからりとした気候をIndian summer と云い、かすんだ空気を伴うそうです。
 旧暦では神無月(10月)、霜月(11月)、師走(12月)は冬の季節となり、この頃は晩秋というより初冬または孟冬と言うべきでしょうね。
 「孟」という言葉は広辞苑によれば「はじめ」という意味で、特に「四季のはじめ」とあり、孟春、孟夏、孟秋となるようですが、現在はほとんど使われていません。

 ところで、元オフコースの小田和正氏が作詞・作曲した「もう終わりだね〜 君が小さく見える・・」ではじまる歌の「もう・・」は副詞で、「もはや」とか「すでに」という意味ですから、日本語は面白うございます。

 私「嘉穂のフーケモン」も、調査をしたり原稿を書いたりしてしばらく本業が忙しく、「板橋村だより」も40日ばかり休眠していましたが、やっと開放されたので、また武蔵の国板橋村より筆の遊(すさ)びもといキーボードの遊(すさ)びに、「心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」でございますよ〜だ。
 水上落葉     鎌倉右大臣
 ながれゆく木の葉のよどむえにしあれば 暮れての後も秋は久しき


 歌を詠むときには「本歌取り」という技法があり、古い歌の1句ないしは2句を取り入れて表現する方法が培われてきましたが、まあ、昔は今ほど「著作権」云々も無かったことだろうし、とやかく言う人もいなかったでしょうから、本人の自主性というか誇りにかけて歌を詠んでいたのでしょうね。

 また、和歌を作る時に参考にしたというかインスピレーションをもらったという歌もあり、こちらは「参考歌」とよばれているようですが、先ほどの鎌倉右大臣実朝の歌は、伊勢物語第九十六段の次の歌を参考としたようです。

 秋かけていひしながらもあらなくに 木の葉ふりしくえにこそありけれ

 男が言い寄っていた女性が、体にかさ(瘡:はれもの)ができて鬱陶しいから、「秋になったら逢いましょう」てなことを言っていたのですが、秋立つ頃に「この女のせうと(兄人)にはかに迎へに来たり」、先程の歌を残してどこかへ行ってしまいました。

 かのおとこは、天の逆手をうちてなむ呪ひをるなる、むくつけきこと。人の呪ひごとは、負ふ物にやあらむ、負はぬ物にやあらん、「いまこそは見め」とぞいふなる。

 「ざまあみろ」、Eat your heart out!でございますよ〜だ。

 ―J. Freeman : ‘November Skies‘      「11月の空」
 Than these November skies          11月の空よりも
 Is no sky lovelier. The clouds are deep;   美しい空はない。雲は深い
 Into their gray the subtle spies        その灰色のなかに、人知れずかすかに
 Of colour creep,                 色が忍び込む
 Changing that high austerity to delight   その高い厳しさを喜びに変えて
 Till even the leaden interfolds are bright.  鉛の襞(ひだ)まで光ってくる
 And, where the cloud breaks, faint azure  そして雲の破れる処、微かに遠い空色
 far peers                     がのぞく
 Ere a thin flushings cloud againt       薄い光る雲がまた
 Shuts up that loveliness, or shares.     その美しさを閉じてしまうか混じらないうちに


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Posted by 嘉穂のフーケモン at 16:41│Comments(0)やまとうた
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