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2005年08月29日

天文(1)−彗星

 天文(1)−彗星

 Brown spots mark impact sites on Jupiter's southern hemisphere. 
 木星表面に残ったシューメーカー・レヴィ第9彗星の衝突痕

 (旧暦  7月25日)

 昔のテレビドラマに「九重佑三子」さん主演の『コメットさん』と言う番組がありましたが、昭和42年(1967)ころのことで、もう40年近くも前になるんですね。
 『コメットさん』のコメットは英語のcomet(彗星、ほうき星)のことで、「髪」を意味するギリシア語に由来し、長く垂れた豊かな髪を暗示しているそうですが、一方中国では彗星の彗の字は箒(ほうき)の意味になります。
 
 日本でも彗星は何かと話題になりますが、近くでは、平成6年(1994)7月16日から22日にかけて木星に衝突したシューメーカー・レヴィ第9彗星 ( Shoemaker-Levy 9 )、古い話では明治43年(1910)のハレー彗星(Comet 1P/Halley)の大接近時、その尾に猛毒のシアン化水素が含まれていることが判明し、尾が地球を通過するコースを取ったため、地球の破滅と一部で騒がれたことなどが有名ですね。

 古来から地球上のほとんどの人々は、彗星は災いを引き起こす悪魔と異端の星と見なしていました。
 「中国では、紀元前1,400年頃から西暦1,600年までの間に、少なくとも338個の個別な彗星の出現を記録し、紀元前240年以来、彼らが見逃したハレー彗星の回帰(平均的な周期は76年)は、紀元前164年のたった1度だけであった」と、アメリカの著名な天文学者でありSF作家であるカール・セーガン(Carl Edward Sagan、1934〜1996)博士は、アン・ドルーヤンとの共著「ハレー彗星 : Comet」の中で述べています。
 中国では、中国の史書をもとにして天文志・律暦志を集成した「歴代天文律暦等志彙編(全10巻)」が中華書局編集部から1975年に出版され、日本でも、中国の「新五代史」(908〜957)までの天文記録の検証が斉藤国治/小沢賢二両氏によってなされ、「中国古代の天文記録の検証」として1992年に雄山閣書房から出版されています。しかし、この本は38,000円と高価なため、なかなか手に入りません。

 1973年、中国湖南省長沙市郊外の五里牌にある前漢初期の長沙王の宰相であった「だい(車偏に大)候」の息子の墓(3号漢墓)から出土した帛書(絹の布に書かれた書物)には、紀元前300年ころに編纂された天文星占書が書かれており、そこには彗星の形態が図解されていました。
 29個の彗星がその姿と災いをもたらす種類別に描かれており、たとえば、4本の尾を持つ彗星は「疫病」の前触れであり、3本の尾の彗星は「国内の惨禍」の前触れ等の解説がなされていました。

 また、中国古代の魯国の年次によって記録された春秋時代(B.C.770〜B.C.403)に関する編年体の歴史書である『春秋』の代表的な注釈書の1つである『春秋左氏伝』の昭公26年(B.C.516)の項には、彗星に関する以下のような記述があります。

 斉に彗星あり。斉公之を禳(はら)はしむ。晏子曰く、「益無きなり。祗(ただ)に誣(ふ)を取るのみ。天道は諂(うたが)はず、其の命を貳(じ)にせず。之を若何(いかん)ぞ之を禳はん。且つ天の彗有るや、以て穢れを除(はら)はんとなり。君、穢徳(くわいとく)無くんば、又何ぞ禳(はら)はん。若し徳の穢(くわい)あらば、之を禳(はら)ふとも何をか損せん。・・・・・・祝史の為(しわざ)も、能く補ふこと無けん」と。

 斉の国に彗星が現れた。斉公がお祓いをさせようとすると、晏子(?〜前500、斉の名宰相:晏嬰)が云った。「な~んにもなりません。ただごまかしになるだけです。天の道に偽りはなく、その下す運命に二通りはないのです。どうして祓うことが出来ましょう。天に彗星が出るのは、世の汚れを除こうとするのです。こちらに汚らわしいことがなければ、何を祓いましょう。もし汚らわしいことがあるならば、祓ったとて何も除けません。・・・・祝史(祈願を司る官)がいかに努めても、補いにはなりません」と。

 今から約2,500年も前の中国人は、何と合理的で冷静な考えを持っていることでしょう。宮城谷昌光氏の「晏子」をぜひ読みたいものです。

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Posted by 嘉穂のフーケモン at 20:14│Comments(0)天文
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