中生代(6)−三畳紀(2)−ヘレラサウルス

嘉穂のフーケモン

2005年11月28日 23:27

 

 Skeleton cast shown alongside the smaller skeleton of Eoraptor and a Plateosaurus skull, North American Museum of Ancient Life 
 
 (旧暦 10月27日)

 親鸞忌 浄土真宗の開祖親鸞上人の弘長2年(1262)の忌日

 1958年、アルゼンチン北西部、南緯40度付近を流れるコロラド川以南の地域パタゴニアのValley of the Moonの近くに住むのビクトリノ・ヘレラ(Victorino Herrera)というヤギ飼いの男によって発見された恐竜の部分骨格は、その後この地を訪れた古生物学者達によってヘレラサウルス(Herrerasaurus:ヘレラのトカゲ)と呼ばれることになりました。

 この部分骨格化石は、後肢、骨盤、尾のみで、頭骨は発見されていませんでしたが、後肢の鋭い爪から肉食の恐竜で、全長は4〜5mであろうと推定されました。当初この化石は、三畳紀(Triassic)イスキグアラスト層(Ischigualasto Formation)から見つかったので、最も古い恐竜であると考えられていました。

 1988年、アルゼンチンとアメリカの学生からなる調査隊を率いてValley of the Moonを訪れたシカゴ大学のポール・セレノ(Paul C.Sereno)博士は、3週間後、2個体のヘレラサウルスを発見しましたが、そのうちの1個体には完全な頭骨が残されていました。

 数ヶ月かけてのクリーニング作業の後、彼らは頭骨と体の骨格を組み合わせることに成功しましたが、その骨格は前肢や後肢の中空度(空洞の体積)が高く、手の指の指先から2番目の指骨が長いと云った初期の獣脚類の特徴を持っていました。
下顎はその中央部に可動性のある関節を持ち、骨は中空で、手は熊手のように特殊化していました。
 その後彼らは、その地域で火山灰からなる地層を発見し、ヘレラサウルスが発見された地層の年代は、約2億2800万年前と測定しました。

 
 ヘレラサウルスは、現在までに発見されている恐竜化石の中では最初の恐竜に最も近い形態を持つものと考えられているエオラプトル(Eoraptor lunensis)と同じ地層から産出し、エオラプトルより大型でより進化した種だと考えられています。
 
 そして、ヘレラサウルスの下顎の中程には関節があって角度15度ほどの可動性があり、逃げようとする獲物を押さえつける効果があったと考えられています。
 後肢の半分の長さがある長い前肢や大きなかぎ爪のある手は、狩りの際に有効であったと思われ、後尾の尾椎がしっかりと組み合った尾は、走行中にバランスを取るのに有効であったと考えられています。

 

 Artist's impression

 ヘレラサウルスは当時の恐竜としては大きく、生息していた動物の中ではワニに似たプレストスクス(Prestosuchus)などに次ぐ大きさの肉食動物だったようで、様々な脊椎動物を補食していたと考えられています。
 当時最も栄えていた植物食動物の主竜類(Archosaurs)であるリンコサウルス類(Rhynchosauridae)の化石が腹部に残されている化石も見つかっています。

 エオラプトル(Eoraptor lunensis)やヘレラサウルス(Herrerasaurus)が生息していたころのアルゼンチンは、マツ類などの球果植物(Pinophyta)が生い茂り、大きな河が流れる豊かな大地でした。多くの単弓類(Synapsida)やワニのような形をした主竜類(Archosaurs)、全長2mの植物食爬虫類リンコサウルス類(Rhynchosauridae)が住んでいました。

 当時最大の植物食動物はディキノドン類(Dicynodon)の単弓類イスキグアラスティア(Ischigualastia)で、最大の肉食動物は全長7mにも達するサウロスクス(Daurosuchus)でした。
 初期の恐竜はまだ少数派で、これらの大型種には近寄らないようにしていたであろうと推測されています。
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