新生代(2)-第三紀(2)- パキケタス・アトッキ

嘉穂のフーケモン

2005年02月01日 21:48

 

 パキケタス・アトッキ (国立科学博物館)

 (旧暦 12月23日)  

  碧梧桐忌、寒明忌

 約5500万年前から3400万年前の第三紀始新世(Eocene)のころ、現在のスペインからインドネシアにかけて、浅い海が広がっていました。この海は、ギリシャ神話の女神の名前をとって「テチス海」と呼ばれています。

 この浅く暖かい海は豊かな栄養をはぐくみ、魚が豊富でした。
さらには、恐竜時代に海を支配していたプレシオサウルス(Plesiosaurus)やモササウルス(Mosasaurus)、その他の大型の海生爬虫類が絶滅した後には、大型捕食者の席が空いていたこともあり、一部の哺乳類は海に帰って行きました。

 昭和54年(1979)、ミシガン大学の古生物学者ギンゲリッチ(Philip Gingerich)博士のチームは、パキスタン北部のヒマラヤ山麓で奇妙な化石に出会いました。
 5200万年前の始新世の地層から産出したこの化石は、哺乳類の頭骨のかけらで、オオカミほどの動物のものと思われました。そしてその頭骨のかけらには、クジラだけに見られる特徴があったのです。

 現在のクジラには、水中で音のした方向を探知できるように、耳に他の脊椎動物にはない特徴がありますが、見つかった化石には、水中での音源探知に必要な構造はありませんでしたが、明らかにクジラの耳の特徴を備えていました。

 ギンゲリッチ博士たちは、最も古い原始的なクジラを発見したのです。

 発見地にちなんでパキケタス・アトッキ(Pakicetus attocki)と名づけられたそのクジラは、その骨格から推測すると現在のアシカやオットセイなどの様に「採食行動」以外は陸上で過ごしていたと考えられています。

 偶蹄類(牛、豚、羊など)の祖先から分化した彼らは、当時テチス海の河口付近で採食を行っていたと思われています。

 

 Pakicetus life restoration.

 同属のパキケタス・イナクス(Pakicetus inachus)の化石も出土しています。
ちなみに分類は、クジラ目-原始クジラ亜目-パキケタス属です。
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