パイポの煙(10)-トラウマ(5)

嘉穂のフーケモン

2004年12月27日 01:07

 

 松尾のジンギスカン

 トラウマ(4)からのつづき
  
 さて数日後、やっと元気になったT君には、恐ろしいトラウマが刻印されていたのです。そうです、「もう二度と焼酎は飲みたくない」、「もう二度とジンギスカンを食べたくない」というトラウマが・・・・

 今では、たまに一緒にお酒を飲むときには、T君は日本酒を注文します。仕方がないので、私も日本酒にしますが、日本酒のほうが私にはこたえます。おいしい焼酎の飲み方があるといっても、T君は二度と焼酎を口にしません。T君にとっては、焼酎=「サッポロソフト」なのです。

 「おいしい松尾のジンギスカンもあるよ」といっても、見向きもしません。彼のジンギスカンは、「ベル成吉思汗たれ(たぶん?)」と獣医学部で死んだマトン(当時そのような奇怪なうわさが流れていた)のジンギスカンなのです。
 

 ベル成吉思汗たれ

 その後、T君は私より1年長く寮に残り、私が住んでいたアパート丹田荘のとなりの部屋に越してきて、暇があるとボロロンと古いギターを弾いていましたが、まじめに学校に通い、応援団も無事卒業して東北の電力会社に就職しました。

 5〜6年後、大好きな桜田淳子には似ていませんが、仙台でかわいいお嫁さんをもらい、今は山形の変電所長をしています。変電所長って何をするの? 同期のT団長に言わせると、ゴジラが上陸してきて、変電所を踏みつぶしたときに、「あっ!ゴジラだ!」と叫ぶ役だそうです。

 T君の長男は、仙台の宮城県仙台第一高等学校に行っていましたが、今年現役で札幌農学校に入校し、どういうわけか工学部情報エレクトロニクス系でうちの息子と同期生になりました。
つまり、親子2代にわたって、同期生となったわけです。

 しかしT君の長男は、残念ながら恵迪寮には住んでいません。「息子が恵迪寮に入いると、殺される」と、T君は本気で信じているからです(これもトラウマかな?)。だからわざわざ入学式前にサッポロに出かけて、アパートを探してきました。

 この心配はあながち理解できないわけではありません。というのも、T君の過去の経験や10年前に飲酒による死亡事故があったということからも推測できるからです。しかし現在、恵迪寮では、「飲酒事故対策委員会」という小委員会を設立し、激しい飲酒を律したり、飲酒に対する勉強会を開いたりしているそうです。

 T君の長男は、卓球部で頑張っているそうですが、今度、札幌に行ったら、息子と一緒に、たっぷりと焼酎を飲ませてあげたいと今から楽しみにしています。たぶん、トラウマには、遺伝はないでしょうから・・・・
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