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2008年06月03日

日本刀の話(1)-はじめに

 日本刀の話(1)-はじめに

 銘「勢州桑名住村正」。東京国立博物館所蔵。
 
 (旧暦  4月30日)

 日本刀歌   北宋 歐陽脩
 
 昆夷(伝説の名刀の産地)は道遠くして復た通ぜず
 世に玉を切ると傳ふるも誰か能く極めん
 寶刀近く日本國に出で
 越賈(越の商人)は之を滄海の東に得たり
 魚皮(鮫皮)に装貼す香木の鞘
 黄と白の間に雑(まず)る鍮(銅と亜鉛の合金)と銅
 百金にて傳へ入る好事(かうず)の手
 佩服せば以て妖凶を禳(はら)ふ可し


  有名な史書である『新唐書』や『新五代史』を撰して後世に影響を与えた文人政治家歐陽脩(1007~1072)が生きた北宋(960~1127)の時代、そのころ日本から輸入されたおもな品物は日本刀でした。

 前掲の漢詩は、その歐陽脩の作による『日本刀歌』の第一段です。
工芸品としての日本刀の優れたことを述べ、刀を帯びれば災いを祓うと詠っています。

 日本では近年、各地の刀剣会の会員が減少しているのに対し、欧米ではますます会員が増加しているそうで、アメリカには全米刀剣会があって会員5,000名以上、欧州にも3,000名を超える会員がいるそうです。

 さて、福永勝美という先生は、元熊本大学医学部助教授で医学博士ですが、刀剣学者福永酔剣としての名の方が著名で、畢竟の大作『日本刀大百科事典全五巻(雄山閣刊)』をはじめ日本刀に関する著作が多く、その系統立った理論と優れた文章力が高く評価され、かつては日本刀剣保存会の審査員も務めていた方です。

 福永勝美氏は、大東亜戦争中、緬甸(ビルマ)方面軍管下第28軍直轄の独立自動車第55大隊に所属して地獄のペグ-山系敵中突破およびシッタン河強襲渡河を体験した軍医中尉で、『ビルマの地獄戦』という手記も出されています。

 その中で福永氏は、インパールの悲劇と呼ばれる第15軍の生還率(約38%)と所属した独立自動車第55大隊および上部の第28軍の生還率(約25%)をあげて、シッタン作戦(シッタン河渡河退却戦)の悲惨さを記述しています。
 ところで有名なインパール作戦(ウ号作戦)は、米英等による中国国民政府を援助するための輸送路である「援蒋ルート」の遮断を目的としてインド北東部の都市インパール攻略を目指した作戦で、昭和19年(1944)3月から6月末まで実施され、補給を軽視したずさんな作戦計画により、日本軍参加将兵約8万6千人のうち戦死者3万2千人余、戦病者4万人以上(そのほとんどが餓死者)を出して中止された作戦です。

 日本敗戦後、福永氏は軍刀に仕込んだ愛刀「来国行(らいくにゆき)」を米軍に接収されていますが、「来国行」といえば、業の千葉(周作)、位の桃井(春蔵)、力の齋藤(彌九郎)と云われた幕末江戸三剣士のひとり、神道無念流練兵館道場の主、齋藤彌九郎善道(よしみち)(1798~1871)の佩刀も「来国行」でありました。

 ちなみに齋藤彌九郎は、神道無念流の同門であった後の伊豆韮山代官江川担庵(1801~1855)とも親交が深く、天保12年(1841)旧暦5月9日には、江川担庵の師匠高島秋帆(1798~1866)が武州徳丸ヶ原(東京都板橋区高島平)で行った日本初となる洋式砲術と洋式銃陣の公開演習にも参加しています。

 と云ふことで、福永酔剣先生の著書『日本刀物語』や『日本刀名工伝』などを参考に、日本刀(Japanese sword)にまつわるお話を書いていくことにしましょう。

 ところで、日本刀も寸法により刀(太刀・打刀)、脇差、短刀に分類され、また、広義には、長巻、薙刀、剣、槍なども入ります。

 特に刀は太刀(たち)と打刀(うちがたな)に分けられますが、太刀(たち)は刃長がおおむね2尺(約60cm)以上で、刃を下向きにして下緒(太刀緒)を用いて腰から下げるかたちで佩用(はいよう)する太刀拵(たちこしらえ)のものを指し、室町期までは馬上戦を想定して長大なもの(3m以上もある斬馬刀など)が作られたようです。

 それに対し、打刀(うちがたな)は刃を上向きにして腰に差すもので、徒歩の地上戦用に作られた刀として戦国期以降に多く作られるようになり、腰に帯びて抜刀しやすいように、「京反り」と云う刀身中央でもっとも反った形になっています。

 

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Posted by 嘉穂のフーケモン at 23:48│Comments(0)日本刀の話
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