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2007年12月26日

日本(33)-旧帝国陸海軍の核兵器開発(5)

  
 日本(33)-旧帝国陸海軍の核兵器開発(5)

 Otto Hahn mit Lise Meitner im Labor, KWI(Kaiser Wilhelm Institute) für Chemie,1913.
 
 (旧暦 11月 17日)

 日本(32)-旧帝国陸海軍の核兵器開発(4)のつづき

 ケンブリッジ大学キャヴェンディッシュ研究所(Cavendish Laboratory)のイギリス人物理学者ジェームズ・チャドウィック(James Chadwick, 1891~1974)は、彼が行った一連の実験において、全ての気体について見出される、その気体の原子核と衝突して発生した反跳核が、光子との衝突ではなく、陽子とほとんど等しい質量を持つ粒子との衝突の結果得られる速度を持っていることを示しました。
 光子:Photon;電磁波の粒子的な側面を説明するために導入した光の量子

 各記号を下記のように定めると、

 日本(33)-旧帝国陸海軍の核兵器開発(5)

 弾性的な正面衝突の場合には、エネルギーおよび運動量の保存法則が成り立つので、下記の(1)、(2)が与えられます。

 日本(33)-旧帝国陸海軍の核兵器開発(5)

 上記の(1)、(2)から下記の式を得ます。

 日本(33)-旧帝国陸海軍の核兵器開発(5)

 反跳核は、水素中ではM=1、窒素中ではM=14 ですから、速度の比は次式のようになります。

 
 日本(33)-旧帝国陸海軍の核兵器開発(5)

 衝突後の反跳核の速度は、水素の場合も窒素の場合も実験的に求められており、以下で表されます。

 日本(33)-旧帝国陸海軍の核兵器開発(5)

 この値を(4)式に代入すると、m=1.15 を得ます。

 結局、質量1の粒子が水素と窒素の中で正面衝突して作り出す反跳核の速さの比は、実験で確認されているものと等しくなります。

 また、もしこの粒子が電荷を持たないならば、原子核との間の静電的相互作用も存在しないので、鉛のよう重い物質の層も自由に通過するはずです。
 反跳核が飛び出す理由は、電気的な相互作用ではなく、この入射粒子が磁気モーメントを持っているか、あるいは核力によるものなのでしょう。

 これこそラザフォードが大正9年(1920)にその論文、˝Nuclear Constitution of Atoms˝ で予測した質量が1で電荷を持たない核(an atom of mass 1 which has zero nucleus charge)の存在を証明するものでした。 

 チャドウィックは、この功績により昭和7年(1932)に王立協会(The Royal Society of London)からヒューズ・メダル(Hughes Medal)を受賞し、昭和10年(1935)にはノーベル物理学賞を受賞しています。

 このような過程を経て、昭和13年(1938)、ベルリン・カイザー・ヴィルヘルム化学研究所(Kaiser Wilhelm Institute für Chemie)の所長オットー・ハーン (Otto Hahn1879-1968)とオーストリアの女性物理学者リーゼ・マイトナー(Lise Meitner、1878~1968)およびハーンの教え子にして助手のフリッツ・シュトラースマン(Fritz Straßmann,1902~1980)らの努力によって、『低速中性子によるウランの核分裂の発見』へとつながっていくのです。

 まだまだつづくよ、道半ばかな~


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Posted by 嘉穂のフーケモン at 14:46│Comments(0)歴史/日本
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