板橋村だより

　

　旧因州鳥取藩池田屋敷表門

　（旧暦　12月 9日）

　「赤門」といえば東京大学のシンボルですが、「黒門」といえば東叡山寛永寺の「黒門」の方が一般的に知られているようです。
　明治元年（1868）5月15日、旧幕臣の渋沢成一郎や天野八郎らにより結成された彰義隊ら旧幕府軍と薩摩藩、長州藩を中心とする新政府軍の間で行われた上野戦争で黒門口（広小路周辺）が激戦となり、この「黒門」は焼失は免れましたが弾丸の跡がたくさん残り、今でも荒川村の南千住1-59-11の円通寺に保存されています。

　ちなみにこの円通寺との関係は、上野の戦場に散乱放置されていた賊軍の彰義隊の遺体を、当時の和尚が処罰覚悟で供養し、その後埋葬の許可が下りたことから遺骸266体をこの寺に埋葬したことに依るそうです。

　さて、こちらの「黒門」、正式名称は「旧因州池田屋敷表門」と言い、因幡・伯耆32万石の旧鳥取藩池田家江戸上屋敷の正門でした。
　もともとは、旧丸の内大名小路（丸の内3丁目、日比谷濠に面した東京會舘）の辺りにありましたが、明治になって当時の東宮御所（いまの高輪の高松宮邸）の正門として移築され、昭和28年（1953）に上野恩賜公園の東京国立博物館構内に移築・保存され現在に至っています。

　国立科学博物館から芸大の方向に向かって歩いていくと、博物館に面した道路沿いからもその重厚で立派な門を見ることができます。堂々とした風格から、通称「上野の黒門」と呼ばれているそうです。

　この門は、現存する大名屋敷表門としては唯一の建造物であり、昭和26（1951）年に国の重要文化財に指定されています。
　この門のような左右に向唐破風屋根の番所を備え持つ門は10万石以上の大名だけに許される最高の格式の大名屋敷表門で、屋根は入母屋造り、江戸末期の建築と推定されています。

　また、千葉県九十九里町の山脇学園臨海校舎内に移築された、三河岡崎藩5万石八重洲上屋敷の武家屋敷門も国の重要文化財で、日本の3門のひとつに数えられています。

　先ほどの上野寛永寺の黒門ですが、この門の前に成立した門前町は上野黒門町と呼ばれていましたが、寛永3年（1626）に上野新黒門町（上野1,3丁目）が成立したために、元の字を加えて上野元黒門町（上野2丁目）となりました。
　現在の不忍通りと中央通りの交差する上野仲町通り入口付近で、食通に有名なうなぎの「伊豆栄」や通りの反対側に下谷風俗資料館がある辺りです。

　江戸幕府の地誌調所が文政年間に江戸市中の官撰地誌『新編御府内風土記』を編纂したした際に、その調査資料として町方からの書き上げを編集し文政12年（1829）に完成した『御府内備考』（町方の記録）（東京都公文書館所蔵）によれば、「東叡山御門前に相成、元黒門町に引続町屋に御成候に付新黒門町と唱候哉」とあります。

　戦後の落語会の重鎮で、5代目古今亭志ん生（1890〜1973）と並び称され、「素人鰻」や「酢豆腐」などの持ちネタで有名だった8代目桂文楽（1892〜1971）は、西黒門町（現在の上野1丁目）に住まいが在ったため、「黒門町（の師匠）」と呼ばれていました。

　現在、上野黒門亭（上野1-9-5、落語協会2階）では、20人程度が入れる畳部屋での落語会を入場料1,000円でやっていますが、落語も生で聞くとなかなか面白いものです。

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