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2005年09月02日

天文(2)−ハレー彗星(1)

 天文(2)−ハレー彗星(1)

 A photograph of Halley's Comet taken during its 1910 approach. 

(旧暦  7月29日) 天心忌 美術評論家にして美術教育者であった天心・岡倉覚三の大正2年(1913)の忌日

 日本でもおなじみのハレー彗星が発見されたきっかけは、イギリスの天文学者、地球物理学者にして数学者、気象学者、物理学者のエドモンド・ハアレイ(Edmond Halley、1656〜1742)が、彗星の中に周期的に出現するものがあると判断したことによります。
 
 サー・アイザック・ニュートン(Sir Isaac Newton,1643〜1727)は、彗星が太陽の周りを放物線軌道を描いて運動していることを証明し、その著『自然哲学の数学的諸原理』(Philosophiae naturalis principia mathematica:1687年出版)のなかで万有引力の法則と、運動方程式について述べ、彗星の放物線軌道を求める方法を明示しました。
 
 ハアレイ(ハレー)は、このニュートンの方法を用いて、過去に観測された彗星の記録から24個の彗星軌道を決定しましたが、その中の1531年、1607年、1682年の彗星の軌道がよく似ていることに注目し、その後発見した木星への軌道接近による引力の影響(摂動:perturbation)を考慮して周期を計算した結果、次の接近(近日点通過)  は、1758年末ごろと予測し、1705年、その概要を記述した『彗星天文学要綱』(Synopsis Astronomia Cometicae)を発表しました。

 ハアレイの死(1742年)後、ドイツのアマチュア天文家ヨハン・ゲオルク・パリッチュ(Johann Georg Palitzsch)は、1758年12月25日、ハアレイが予測した彗星を発見し、ハアレイの予測は的確である事が証明されて、この彗星に彼の名前が付けられました。
 ハレー彗星は、紀元前2312年から各地の記録に残されているようですが、前漢の高祖劉邦(247BC?~195BC)の孫で淮南王を継いだ劉安(179BC~122BC)が、第7代皇帝武帝(在位 141BC~87BC)の時代、中央の儒教化政策に反発し道家思想を中心にまとめた『淮南子・兵略訓6』に次のような記述があります。

 武王、紂を伐つに、東面して歳を迎へ、氾に至りて水あり、共頭に到りて墜(くず)れ、彗星出でて殷人(いんびと)に其の柄(へい)を授(さず)く。

 武王が殷の紂王を誅伐した時、その方角は東向して大歳を迎えるという凶方であり、氾水に到達すると大水に出会い、共頭山まで来ると山崩れが起こり、折しも彗星が出現したが、その柄(先端)は殷の方角(東)に向いており、それは殷人にその箒(ほうき)の柄を授けて周を掃おうとする兆候を示していた。

 周の武王が暴虐な殷の紂王を誅伐したのは、『史記』周本紀には、武王の十一年二月甲子とあり、最近の研究では紀元前1055年のこととなるようですが、天空にハレー彗星とおぼしき彗星が現れたことが記録に残されています。

 また、中国古代の魯国の年次によって記録された春秋時代(770BC~403BC)に関する編年体の歴史書に『春秋』がありますが、その注釈書の1つである『春秋左氏伝』、文公14年(613BC)の項には、ハレー彗星と思われる以下のような記述があります。

 秋、七月乙卯夜、・・・・・星有り孛(はい)して北斗に入る。

 秋、7月乙卯夜、・・・・・彗星が出て、その彗(ほうき:尾)が北斗星を払った。

 『史記:秦始皇本紀第六』には、秦の始皇帝7年(240BC)に彗星が現れた事が記録されていますが、この記録が確かなハレー彗星のものとされる最も古い記録となっています。 

 七年、彗星先ず東方に出で、北方に見(あら)はれ、五月西方に見(あら)はる。将軍驁(がう)死す。龍・孤・慶都を攻めて還れる兵を以て汲を攻む。彗星復た西方に見(あら)はる。十六日夏太后死す。

 始皇帝の七年、彗星がまず東方にあらわれ、ついで北方にあらわれた。五月には西方にあらわれた。将軍の蒙驁(もうごう)が死んだ。龍・孤・慶都を攻めて、引き返した軍で汲(河南省)を攻めた。彗星がまた西方にあらわれること十六日間に及んだ。この年、荘襄王の生母夏太后が死んだ。

 殷の紂王も周の武王も、そして秦の始皇帝もハレー彗星を眺めていたんですね。
 すごいロマンを感じますです。

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Posted by 嘉穂のフーケモン at 17:30│Comments(0)天文
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