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2005年09月01日

古生代(5)−ペルム紀(2)−大量絶滅(2)

 古生代(5)−ペルム紀(2)−大量絶滅(2)

 The extent of the Siberian Traps.

 (旧暦  7月27日) 

 木歩忌 俳人富田木歩の大正12年(1923)の忌日
  
 ペルム紀(1)−大量絶滅(1)のつづき

 アメリカ・オレゴン大学の地質科学教授グレゴリー・レタラック博士を初めとする世界の研究者たちが、この数年の間に南極、中国、グリーンランド等の世界各地のPT境界層を精密に分析したところ、どのPT境界層でも絶滅が起きたとされる部分から、通常よりも大量のC12(炭素12)が見つかりました。

 このC12を極端に多く含む地球上の物質はメタンハイドレート(理論化学式:CH4・5.75 H2O)と呼ばれ、大量の有機物を含んだ土砂が低温・高圧の状態におかれ、そのなかのメタンガスが結晶化して、白いゼリー状または雪状の物質に変化したものです。

 このメタンガスは、C12を好んで体内に取り込む性質がある嫌気性(酸素を嫌う)バクテリアによって作られたものと考えられています。
 従って、PT境界層でC12の比率が大きいのは、当時地下に埋蔵されていたメタンハイドレートが溶け出し、大量のメタンガスとなって大気中に放出された証拠だと考えられるようになりました。

 そしてそのメタンガスを放出させた要因は、ロシアの中央シベリア高原に痕跡が残されている巨大噴火が引き起こした地球温暖化によるものだという考え方が有力になってきました。
 現在中央シベリア高原(面積約200万平方キロメートル:オーストラリア大陸の約4分の1)を形成している巨大な岩塊「シベリア洪水玄武岩」(the Siberian flood basalt)は、約2億5000万年前に起きた巨大噴火の痕跡と考えられています。
 この巨大噴火は溶岩カーテンの高さ2000m〜3000m、割れ目の長さは50?にも達し、約200万立方キロメートルを上回る膨大な低粘性溶岩を噴出し、現在の大気に含まれる量の約15倍の大量の二酸化炭素が放出されたと計算されました。

 そしてその温室効果による温暖化で地中のメタンハイドレートが溶け出し、メタンガスとなって大量に大気中に放出された結果、さらなる温暖化が促進され、試算の結果赤道付近では8〜9℃、極付近では20〜25℃も気温が上昇し、陸上の動植物はそのほとんどが絶滅してしまったというものです。
 
 また海では、超高温の大気が海洋の大循環を停止させ、酸素を豊富に含んだ海水面の水が海中へ供給されなくなり、加えて海水温の上昇により海水の酸素溶解度が低下して、海中の深刻な酸素欠乏を生み出したというシナリオが考えられました。

 まとめると、以下のようになります。

 1. 超巨大大陸パンゲアの形成により、超大陸の下へと潜り込んだ大量の海洋プレートの残骸が数千万年かけて地球のコア・マントル境界へと落下し、コア・マントル境界付近から高温の軽い巨大なマントルの塊(スーパーブルーム:直径1000?)が上昇して地殻を突き上げて巨大噴火が発生した。
 2. そして火山ガスによる温暖化が始まり、それがメタンハイドレートを溶解していった。その過程で放出されたメタンガスによって大気が超高温化し、陸上の動植物が死滅した。
 3. 大気の超高温化がもたらした海水の大循環の停止により、海は極端な酸素欠乏に陥り、海棲生物も絶滅した。
 以上のようなお話も一つの仮説に過ぎず、PT境界の絶滅原因の結論が出るのは、当分先のようです。

 この種の学問は、こつこつと調査を重ねて実態を明らかにし、さらに仮説を組み立てていくという実に地味な作業の積み重ねで、まさに、ギリシアの数学者エウクレイデス(ユークリッド:Euclid) (365? BC〜275 BC?) がエジプト王プトレマイオス一世(Ptolemy I :367 BC〜283 BC)に語ったという「幾何学に王道なし」(There is no royal road to geometry.)そのものですね。

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Posted by 嘉穂のフーケモン at 12:47│Comments(0)古生代
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