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2005年07月11日

日本(19)−関特演

 日本(19)−関特演

 新京の関東軍司令部

 (旧暦  6月 6日)

 1941年6月22日午前3時15分、バルト海から黒海までの約2100㎞に及ぶ長大な独ソ国境において、戦車19個師団を含む149個師団約313万人のドイツ軍が、2年前の1939年8月23日に締結された独ソ不可侵条約を無視して、一斉に侵攻を開始しました。

 東西二方面作戦を選択することは通常避けるべき戦略ですが、イギリス上陸作戦の見送りもあり、ドイツにとってはあり得べき選択として早くから予測されていたようでした。

 そのように世界情勢が混沌としていた中、昭和16年(1941)7月2日、御前会議で「情勢ノ推移ニ伴フ帝国国策要綱」が決定されました。

 第1 方 針
 1 略
  帝国ハ依然支那事変処理ニ邁進シ且自存自衛ノ基礎ヲ確立スル為南方進出ノ歩ヲ進メ又情勢ノ推移ニ応シ北方問題ヲ解決ス
 3 帝国ハ右目的達成ノ為如何ナル障害ヲモ之ヲ排除ス
 第2 要 領
 1 略
 2 帝国ハ其ノ自存自衛上南方要域ニ対スル必要ナル外交交渉ヲ続行シ其ノ他各般ノ施策ヲ促進ス
 之カ為メ対英米戦準備ヲ整ヘ・・・・・・・仏印及泰ニ対スル諸方策ヲ完遂シ以テ南方進出ノ態勢ヲ強化ス
 帝国ハ本号目的達成ノ為対英米戦ヲ辞セス
 3 独ソ戦ニ対シテハ三国枢軸ノ精神ヲ基調トスルモ暫ク之ニ対シ介入スルコトナク密カニ対ソ武力的準備ヲ整ヘ自主的ニ対処ス 此ノ間固ヨリ周密ナル用意ヲ以テ外交交渉ヲ行フ
 独ソ戦争ノ推移帝国ノ為有利ニ進展セハ武力ヲ行使シテ北方問題ヲ解決シ北辺ノ安定ヲ確保ス
・・・・・・・・・・

 出典:外務省編『日本外交年表竝主要文書』下(原書房、1965年)531-532 頁
 当時、独ソ開戦直前のソ満国境に配置された極東ソ連軍兵力は、狙撃30個師団、騎兵2個師団、戦車約2,700輛、航空機約2,800機、約62万人弱であったと推測されていました。
 そして、独ソ戦によりその兵力が欧州戦線に移送され、地上兵力が2分の1、戦車や航空機が3分の1に減少することが、対ソ武力発動の必要条件だったと云われています。
 
 満州に対する戦備集中は、第一次は7月7日に動員下令があり、7月24日に完了、第二次は7月16日動員下令、8月8日に完了しています。

 この間、満州各地へは、兵員約50万人、膨大な弾薬・資材、馬匹約15万頭が続々と送られ、朝鮮・満州に駐屯する14個師団を戦時編制に増強し、新たに2個師団その他を増派して16個師団を基幹とする74万人もの大兵力に達したと云われています。これが「関東軍特種演習」、通称「関特演」と呼ばれるものでした。
 そして、関東軍は「無敵関東軍」と呼ばれ、日本最強最大の方面軍であると謂われました。

 しかし、独ソ戦の推移も希望通りには進展せず、日本が期待したような極東ソ連軍兵力の西送は行われず、また物資・兵員の集中も円滑にはかどらず、さらには仏印進駐による米国からの石油の全面禁輸もあり、陸軍は8月9日に、年内対ソ武力発動の中止を決定しました。

 その後、太平洋戦争の劣勢に伴い、昭和19年初頭から昭和20年1月までに、関東軍は師団単位で14個を抽出され、さらに昭和20年3月までには抽出師団は21個におよび、さすがの関東軍も「対ソ静謐確保(対立せず穏やかに保つ)」を余儀なくされました。

 遙か昔、関東軍出身の先輩の親父さんに、「関東軍は昭和20年8月9日のソ連侵攻時に、何故民間人を見棄てて撤退したのか」と激しく食って掛かったことがありましたが、その親父さんも命令で仕方がなかったのでしょうね。

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Posted by 嘉穂のフーケモン at 21:55│Comments(0)歴史/日本
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