板橋村だより

　　

　The Mongol fleet destroyed in a typhoon, ink and water on paper, by Kikuchi Yōsai, 1847.

　（旧暦11月19日）

　ワシントン条約（絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約）で絶滅種に指定されている応援団ですが、東北大学や名古屋大学とともに、このところいつも絶滅が噂されていた九州大学応援団がかろうじて持ちこたえているようです。

　九州大学応援団といえば、「観音様」という両手を合掌して頭の上に上げ、うさぎ跳びをして廻る荒行のため、跡を次ぐ種がいなくなった団体でしたが、いつの間にか細々ですが復活していました。

　その彼らがうたう歌に、「元寇」があります

　四百余州を挙る 十万余騎の敵
　国難ここに見る 弘安四年夏の頃
　なんぞ怖れんわれに 鎌倉男児あり
　正義武断の名 一喝して世に示す

　日清戦争には陸軍軍楽隊軍楽次長として従軍した永井健子（けんし）（1865〜1940）が明治25年（1892）に発表した曲で、文永の役につづき弘安4年（1281）に北部九州に来襲した元軍を日本が良く防ぎ、神風の助けによってこれを殲滅したという故事を歌ったもので、日清戦争の折、盛んに歌われたそうです。

　さて本題ですが、南宋を制圧することに腐心していた元にとって、日本は気にかかる存在でした。元の世祖至元3年（1266）8月、フビライは兵部侍郎（国防次官）の黒的を国信使に、礼部侍郎（文部次官）の殷弘を国信副使として日本国王宛の国書を持たせ、高麗を経由して日本に向かわせました。また、高麗には嚮導の任（道案内）を要請しました。

　しかし、彼らは日本へは行かずに、引き返しました。高麗の親モンゴル的な文人派の李蔵用が元の使節黒的に手紙を書いて、日本へ渡るのが不可であることを縷々説いたためと云われています。黒的は李蔵用の熱意に動かされ、巨済島松辺浦まで行って引き返してしまいました。

　松辺浦から遙か対馬を望んで、波が荒く航海に支障をきたすとの理由で、そのまま高麗の首都江都に引き返してしまったのです。

　そのときに、世祖フビライに送った高麗の弁明書に有名な次の一節があります。

　大洋万里、風濤（ふうとう）天を蹴る。・・・・・
　
　「本日天気晴朗なれども波高し」といったところでしょうか。蒙古高麗両国合同の使節一行は、至元4年（1267）正月に巨済島松辺浦に到着したそうですから、冬の対馬海峡は偏西風の影響でそれはそれは大荒れのたいへんな状況だったのでしょう。

　私「嘉穂のフーケモン」も11月の東シナ海を日本郵船の客船「飛鳥」（28,856t）で航海したことがありますが、大揺れの船内では大きなテーブルがずれ、船酔い者が続出して大変でした。大きな船のピッチング（縦揺れ）も気持ちの悪いものです。
　
　世祖フビライは予めこのことを予測して、釘をさす命令を送っていたことが、徳川光圀が1667年に刊行した朝鮮3国時代から高麗までの歴史書である「東国通鑑」に記載されているそうですが、それによれば、

　風濤の険阻を以て辞とするなかれ（風濤険阻を口実として辞遁することなく周旋の任を勤むべし）

　との命令を発していたそうですが、社長に逆らう社員は、いつの世にもいるもんですね。

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