2011年11月05日
歴史/ヨーロッパ(5)ープリニウスの博物誌
F. J. ベルトゥーフ (1747~1822) 『子供のための絵本 動物、果物、鉱物、衣装その他各種の学ぶべきものを、自然、芸術、学問の領域から集めた楽しい本』(1790年刊)。
コカトリス(左上)、フェニックス(右上)、ユニコーン(左下)。
(旧暦10月10日)
博物誌(Naturalis Historia)全37巻を著したガイウス・プリニウス・セクンドゥス(Gaius Plinius Secundus, 23〜79)は古代ローマの博物学者ですが、政治家でもあり、また軍人としても活躍しました。
彼が著した博物誌全37巻は、天文・地理から動植物・鉱物、さらには技術や芸術を含む文化にまで及び、当時の百科全書と呼ばれるにふさわしい範囲の広さを示しています。
中でも植物や動物の薬品としての効能や利用法に多くの巻があてられているのは、当時の科学の中に占めていた薬物学の重要性を示すものと云われています。
しかしながら、その内容については、数多くの文書を参考にしており、かの有名なアリストテレス(B.C.384〜B.C.322)の後継者となったギリシアの哲学者、博物学者テオフラストス(B.C.371〜B.C.287)の『植物誌』(全9巻、現存する西洋の薬用植物誌としては最古のもの)やその他の文書を踏襲した部分もあるようです。
第1巻の内容説明の末尾に、プリニウスは自ら参照したとする古代作家の名前をあげていますが、それによるとローマ人146名、その他の外国人327名が名を連ねています。
特にルネサンス期の15世紀にラテン語の活版印刷で刊行されて以来ヨーロッパの知識階級に愛読され、科学史・技術史の記述や古代ローマ芸術に関する記述は貴重な資料としても引用されたようです。
ところが一方、怪獣、巨人、半漁人など現存しない怪物についても記述されており、近世の幻想文学にも影響を与えたとされています。
その一部を上げると、
1. アピス(Apis)
右腹に三日月型の白斑がある雄牛。エジプトの神牛。(第8巻第71(46)章第184 - 186節)
2. アンフィスバエナ(Amphisbaena)
エチオピアに棲む双頭の毒蛇。(第8巻第35(23)章第85節)
3. エアレー(Eale)
カバぐらいの大きさで、ゾウの尾を持ち、毛色は黒あるいは黄褐色で、イノシシの顎を持ち、どの角度にも動かすことの出来る二本の長い角を持つ動物。(第8巻第30(21)章第73節)
4. カトブレパス(Catoblepas)
頭をいつも地面に垂れ下げていて、その目を見た者は誰でも即座に絶命する。(第8巻第32(21)章第77節)
5. コロコッタ(Crocota, Corocotta)
ハイエナと雌ライオンとの交配によって生まれる怪物。人間や牛の声を真似る。(第8巻第30(21)章第72節、第8巻第45(30)章第107節)
6. サラマンダー(Salamandra)
トカゲのような形をした、全身を斑点に覆われている動物。(第10巻第86(66)章第188節、第11巻第116(53)章第280 – 281節、第29巻第23(4)章第74 - 76節)
7. スフィンクス(Sphinx)
毛が褐色で胸に一対の乳房がある獣。(第8巻第30(21)章第72節)
8. ドラゴン(Draco)
インドに棲むドラゴンは象と戦う際に、体を巻きつけ、動けないようにする。(第8巻第11(11)章第32節)
9. トリトン(Triton)
半人半魚の姿をした海神。(第9巻第4(5)章第9節)
10. ナウプリウス(Nauplius)
船の形をした貝。(第9巻第49(30)章第94節)
11. ネレイス(Nereis)
半人半魚の姿をした海の精霊。
12. バシリスク(Basiliscus)
キュレナイカ(リビア王国東半)に生息する猛毒のトカゲの一種。その目で見られた者は即死、もしくは石化するといわれる。(第8巻第33(21)章第78 - 79節)
13. フェニックス(Phoenix)
アラビアに生息し、大きさは鷲ぐらいで、頸まわりは金色、尾は青く、薔薇色の毛が点々と混ざり、体は紫。(第10巻第2(2)章第3 - 5節)
14. ペガサス(Pegasus)
エチオピアに生息する翼の生えた角を持つ馬。(第8巻第30(21)章第72節、第10巻第70(49)章第136節)
15. マンティコア(Mantichora)
エチオピアに生息し、顔は人間、体は獅子、尻尾はサソリのようで、人間の声を真似るという。(第8巻第30(21)章第75節、第8巻第45(30)章第107節)
16. ユニコーン(Monoceros)
インドに生息し、馬の体、鹿の頭、象の肢、猪の尾を持ち、額の中央に黒く、長い一本の角が生えている獰猛な獣。(第8巻第31(21)章第76節)
17. レウクロコタ(Leucrocota)
ハイエナの異種。ロバほどの大きさで、鹿の肢、獅子の首、尾、胸、穴熊の頭、割れた蹄、耳まで裂けた口を持ち、歯のかわりに一本の連続した骨がある。人間の声を真似る。(第8巻第30(21)章第72節)
(Wikipedia より)
F. J. ベルトゥーフ (1747~1822) 『子供のための絵本 動物、果物、鉱物、衣装その他各種の学ぶべきものを、自然、芸術、学問の領域から集めた楽しい本』(1790年刊)。
グリフォン(左上)、パーン(左中)、ヒッポカンポス(左下)、ギガース(右中)、人魚(右下)
ガイウス・プリニウス・セクンドゥス(Gaius Plinius Secundus, 23〜79)は、北イタリアの風光明媚なラリウス湖畔のコムム(コモ)に生まれ、首都ローマにおいて頭角を表し、騎士階級の職である援軍騎兵隊長、元首属吏、ミセヌム艦隊長などを勤め、また、ウェスパシアヌス帝(在位69〜79)、ティトゥス帝(在位79〜81)の顧問でもありました。
甥で養子の文人政治家ガイウス・プリニウス・カエキリウス・セクンドゥス(小プリニウス、61〜112)と区別するために大プリニウス(Pliny the Elder)と呼ばれています。
大プリニウスは公務の傍ら膨大な著作を残したと、甥の小プリニウスはマケル宛ての書簡に書いています。
1. 『騎兵の槍術』 1巻。
2. 『ポンポニウス・セクンドゥスの生涯』 2巻。
3. 『ゲルマニア戦記』 20巻。
4. 『弁論術学習案内』 3巻。
5. 『文法上の曖昧な表現』 8巻。
6. 『アウフィディウス・バッスス以後の歴史』 31巻。
7. 『博物誌』 37巻。唯一現存するもの。
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