2006年04月23日
漢詩(14)−白居易(3)−琵琶行(3)
九江烟水亭
(旧暦 3月26日)
漢詩(13)−白居易(2)−琵琶行(2)のつづき
序文で九江郡という秦代(B.C.221〜B.C.206)に設置された古称で呼ばれている江州は、現在では長江中流域の江西省九江市という人口450万人を擁する重要港湾都市になっていますが、白居易が左遷された中唐の頃は、蘆や荻(おぎ)が一面に茫々と生い茂った低湿地に位置する寒村でした。
白居易があてがわれた司馬という官職は州の長官である州刺史の補佐役でしたが、この当時の州刺史の権限は節度使と呼ばれた軍政権と民政権を併せ持った藩鎮の有力者に握られており、その補佐役たる司馬は名目だけの役職で、左遷された者にあてがう名ばかりの閑職だったようです。
最後の句で白居易は、自分のことを江州司馬と称していますが、司馬の位(従五品下)に許された緋色の衣ではなく、最下位の官職(従九品下)の身分の者が着る青衫(せいさん:青いひとえの短い衣)と自嘲的に表現しているところに白居易の鬱屈した心情が吐露されており、「同じく是れ天涯 淪落(落ちぶれる)の人」と云うのが、この詩全編を貫く主題となるようです。
沈吟し 撥(ばち)を放ちて 絃中に插(さしはさ)み
衣裳を整頓して 起ちて容(かたち)を斂(をさ)む
自ら言ふ 本(もと)是れ京城(帝都長安)の女(むすめ)
家は蝦蟆陵(がまりょう:長安の東南郊外)下に在りて住めり
十三に 琵琶を學び得て 成り
名は 教坊(歌舞を教えるところ)の 第一部に屬す
曲 罷(をは)りては 曾(かつ)て善才(琵琶の名人)をして 伏さしめ
妝(よそほ)ひ成りては(美しく装う) 毎(つね)に秋娘(名妓の杜秋娘)に妬(ねた)まる
五陵の年少(長安郊外の豊かな地域に住む貴公子) 爭ひて 纏頭(てんとう:心付け)し
一曲に 紅綃(紅い薄絹の心付け)は 數 知れず
鈿頭(でんとう)の雲篦(うんぺい)(螺鈿の飾りのこうがい)は 節を撃ちて碎け
血色の羅裙(らくん:薄絹のスカート)は 酒を翻(ひるがへ)して 汚(けが)る
今年の 歡笑 復た 明年
秋月 春風 等?(とうかん:なおざり)に 度(す)ぐ 続きを読む