2005年09月04日
詩歌(4)−高楼(たかどの)
旧東京陸軍造兵敞本部
(旧暦 8月 1日)
わかれゆくひとををしむと こよひより とほきゆめちに われやまとはん
妹
とほきわかれに たへかねて このたかどのに のぼるかな
かなしむなかれ わがあねよ たびのころもを とゝのへよ
姉
わかれといへば むかしより このひとのよの つねなるを
ながるゝみづを ながむれば ゆめはづかしき なみだかな
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妹
きみがさやけき めのいろも きみくれなゐの くちびるも
きみがみどりの くろかみも またいつかみん このわかれ
姉
なれがやさしき なぐさめも なれがたのしき うたごゑも
なれがこゝろの ことのねも またいつきかん このわかれ
明治二十九年の秋より三十年の春へかけてこゝろみし根無草の色も香もなきをとりあつめて若菜集とはいふなり、このふみの世にいづべき日は青葉のかげ深きころになりぬとも、そは自然のうへにこそあれ、吾歌ほまだ萌出しまゝの若菜なるをや。
『若菜集−序二』
キリスト教の洗礼を受け、明治24年(1891)明治学院を卒業した藤村・島崎春樹(1872〜1943)は、明治25年(1892)明治女学校高等科の英語科教師となり、翌明治26年(1893)北村透谷らによる「文学界」の創刊に参加しました。 続きを読む